極楽寺山と変態。バイク時々ラン

広島県廿日市市にあるヒルクライムの聖地・極楽寺山。『極る?』を合言葉に愛すべき変態たちと今日もまた極楽寺を登ります。人生一生修行。

【HIROSHIMA 飲酒運転ゼロ PROJECT】

昨日の中国新聞に掲載されていた記事を転載します。

昨年5月、この自転車に乗った16歳の少年が命を落としました。

センターラインを越えて突っ込んできた飲酒運転の軽自動車に殺されたのです。

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一時期は飲酒運転による罰金罰則、取り締まりが厳しくなったこともあり、

飲酒運転も減っていくと思われました。

しかし現実には、依然このような悲惨な事件が後を絶ちません。

 

同じ自転車乗りでありドライバーでもある、また社会的にも責任ある一人の大人として

断固として飲酒運転は許せません。

同じ子を持つ親としてやり切れない想いでいっぱいになります。

 

以下、亡くなった少年のお母さんのメッセージを転載します。

 

 

 

□■三浦由美子さんからのメッセージ■□

 

どうして息子が 命を奪われなければ ならないのか。

 

「帰りが少し遅くなるから」。息子の伊織からメールがあったのは、昨年5月2日の夜8時ごろでした。高校2年だった伊織は自転車競技部に所属。4月の県大会は団体戦で2位の好成績を挙げ、ますます熱心に練習するようになっていました。その日も翌日からの合宿に備え、競技仲間がいる別の高校を訪問していたのでした。

 

仕事から帰ったばかりの私は疲れから、うとうとしながら、伊織の帰りを待っていました。リビングの電話が鳴ったのはその時です。警察からでした。電話口で告げられたのは、とても信じられない内容でした。そう遠くない県道で自転車と軽乗用車が衝突したこと。自転車に乗っていた若者が全身を骨折し、心肺停止となり、ICUに運ばれたこと。そして自転車の登録番号が伊織のものであること。

 

一体、何が起きたのか、何をすれば良いのか。まったくわかりませんでした。娘に言って、何度も何度も伊織の携帯電話に連絡させました。まったくつながりませんでした。涙が頬を流れてくるのを感じました。娘はぶるぶる震えています。病院に向かう車の中で、主人は部活顧問の先生に電話しようとしたのですが、何度やってもうまくボタンが押せません。皆が激しく動揺していました。

 

伊織に会えたのは、夜中の3時を過ぎてからでした。伊織は顔を包帯に包まれ、ベッドに横たわっていました。包帯の間から覗く皮膚は腫れ上がり、両足の太ももは逆方向に曲がっていました。どう声を掛けていいのか、私は言葉が見つかりませんでした。目の前にいるのが果たして本人なのか、どうも確信が持てなかったのです。でも、親指の爪に付いていた歯の跡を見た時、「ああ、やはり伊織なんだ」と思いました。時々、爪をかむのが癖だったからです。

 

事故の詳しい状況はなかなか、わかりませんでした。不可解だったのは、軽乗用車と正面衝突したという事実。急な飛び出しでもしなければ、正面衝突することはあり得ない。車との間隔に余裕があったら、避けられるはずですから。もしかしたら、息子の方に過失があるのでは、と最初のうちは不安に思っていました。

 

しかし通夜の日になって、事故に飲酒運転の疑いがあると報道で知りました。

 

やがて少しずつ全容が見えてきました。

 

あの夜、泥酔状態のドライバーの運転する車が中央線を大きく乗り越え、対向車線を走っていた伊織の目の前にいきなり現れ、はねたのが真相でした。伊織は車のフロントガラスに頭を突き入れ、ボンネットに乗った状態になり、車はそのまま100メートルも走り続けたそうです。そして対向車を避けた拍子に体は歩道に投げ出され、車は蛇行し50メートルほど先でやっと止まったということでした。

 

ドライバーはこの日、知人と店で飲酒した後に運転。ひどく酔っていて、事故を起こした直後も、駆け付けてきた人々に暴言を吐くなど、手の付けられない状態だったと言います。「まるで鬼のような形相だった」。現場にいた人から、後からそう聞きました。

 

供述調書を読み、事実が明らかになると、怒りと無念さで心が張り裂けそうになりました。「どうして私の息子が命を奪われなければならないのか」。「飲酒運転への社会の目は厳しくなっているのに、どうしてなくならないのか」。伊織の死をきっかけに、飲酒運転をわが身の問題として捉え、悲劇を防ぐよう、自分たちの力で何ができるかを考えるようになりました。事故から4カ月が過ぎるころには、飲酒運転撲滅を呼び掛けるステッカーを配布するといった活動を始めました。私と同じように飲酒運転で子どもを亡くした福岡市や出雲市の母親とも知り合い、運動の輪を広げていきました。

 

アルコール依存症との関連も指摘される飲酒運転は常習性が強いのが特徴です。ことしの5月には、飲酒者自身の自覚だけでは防げないことから、撲滅のための条例づくりを求める要望書も広島県に提出しました。ここ最近では、伊織の通った高校の生徒さんや保護者の皆さん、先生方たちと「生命(いのち)のメッセージ展」を開催。交通事故や犯罪などで命を奪われた全国約150人のオブジェを展示しました。伊織のパネルのそばには、事故の衝撃で前輪が曲がった愛用の自転車も置き、飲酒運転の危険を訴えました。

 

進学して、成人して、結婚して、子どもができて・・・。そんな将来や命のつながりを伊織は失ってしまいました。それが何より悲しい。飲酒運転が厳罰化され何年もたつのに、悲惨な事故は今も後を絶ちません。広島県でも飲酒運転事故数と死亡者数が昨年を上回ったと聞き、あらためて憤りを感じます。もうこれ以上、誰一人として被害者にも加害者にもなってほしくない。今はそうした思いでいっぱいです。